スー族やブラックフット族に代表される平原インディアンの社会は、高度な個人主義の文化を持っていた。彼らの社会には、今も昔も全部族員が盲従するような「国王・皇帝」的な支配者は存在しない。戦いにおいても、戦士たちはすべて自分の判断や意志で戦うのであって、戦略や戦法を指示し、戦を率いる「ウォー・チーフ」と白人が呼ぶような存在は平原部族にはいなかった。重要事はすべて、完全対等な「文・武」双方を代表する酋長たちの合議で決定した。平原部族には、誰かが誰かに「命令する」という文化はない。
これを知らない白人たちは、西部に押し寄せた際に、彼らの頂く大統領のような、絶対的な権限を持つ「全部族大酋長(そんなものは存在しない)」と条約交渉を結ぼうとした。しかし、仮に「A」という酋長が白人と何かの約束事に賛同しても、それは「B」や「C」ほかの酋長とはまったく関係のないことであり、部族全体に何ら影響しないものだった。レッド・クラウドなどは、まさに白人が「大酋長」と勝手に決めてしまった存在であって、彼がいかに「ララミー砦条約」などで署名をしたとしても、彼は一介の部族員にすぎず、ましてや合議を経ていない以上、部族全体にとっては何の意味もなさなかった。
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19世紀の「開拓の時代」の、白人は「酋長と取り決めをしたのに、部族員が従わない」としてインディアンを、インディアンは「白人には何人代表者がいるのか、無理やり約束をさせておいて来るたびに違うことを言う」として、互いに「嘘つき」呼ばわりするという対立構図の根底には、そもそもがこれら相反する文化の違いがあった。